うろ覚え童話シリーズ(1) 北風と太陽(1)

北風と太陽は暇を持て余して、次に通る旅人のコートをどちらが脱がせられるか、という遊びを始めました。
まずは北風の挑戦です。旅人のコートを吹き飛ばすために、思いっきり息を吹きかけます。
ごうごう、びゅうびゅう。
しかし、旅人は寒さでコートをしっかりと着込んでしまったため、吹き飛ばすことはできませんでした。
「そんなんじゃ旅人のコートは脱げねえよ。代われ」
北風の失敗を鼻で笑いながら、太陽が前に出ました。気温を上げてコートを脱がせようと、必死で頭を光らせます。
さんさん、ぎらぎら。
すると、旅人はコートを脱いで、日除けにするために頭からすっぽりとそれをかぶってしまいました。
「…これは私の勝ちか?」
微妙な結果に、太陽も素直に喜べません。その時、「今だ」北風が叫び、勢い良く息を吹きかけます。
ごうごう、びゅうびゅう。
するとどうでしょう、油断した旅人の手からコートがスルッと滑り出て、飛んでいってしまいました。
それを見て太陽は言いました。
「まいったな、完全にしてやられた。お前の勝ちだ」
しかし北風は勝利を讃えるために差し出された太陽の腕を払いのけます。
「…北風?」
北風は言いました。
「この勝利は俺のものではない。俺とお前、二人で協力して掴んだ勝利なんだ」
「…北風!」
「太陽…!」
二人は力強く抱き合い、お互いの勝利を讃えあいましたとさ。

めでたし、めでたし。